ユリス・コランによって一躍有名になったこの地区において、従来のメゾンのイメージを一新するテロワールにこだわったワイン造りで世界的な評価を獲得し、今後さらなる飛躍が期待されている。
ユリス・コランによって一躍有名になったこの地区において、従来のメゾンのイメージを一新するテロワールにこだわったワイン造りで世界的な評価を獲得し、今後さらなる飛躍が期待されている。
シャンパーニュ地方には、コート・デ・ブランやモンターニュ・ド・ランスといった名高い産地の名声に隠れながらも、ひっそりと、しかし確かな個性を放つ地域が存在する。それが、マルヌ川の支流、プティ・モラン川上流に広がるヴァレ・デュ・プティ・モラン地区だ。この地区は、コート・デ・ブランとコート・ド・セザンヌの間に位置し、903haの栽培面積を持つ。広義にはコート・デ・ブランに含まれ、ムニエが47%、シャルドネが40%、ピノ・ノワールが13%植わり、18の村で構成されている。この地のブドウ栽培者の多くが自社詰めせず大手メゾンにブドウを販売しているため知名度こそ低いが、この地から素晴らしいシャンパーニュが生み出されることを最初に世界に示したのはコンジー村を拠点とするユリス・コランであった。シャンパーニュの権威、ピーター・リエムはこの地の特徴を「多様な土壌からエレガントなシャンパンが生まれる。特にシャルドネは表現力豊かだ」と評す。スタイルの鍵となる土壌は、隣接するコート・デ・ブランと比較して、チョーク層の上に堆積する粘土層がやや厚いため、豊かなミネラル感に加え、ふくよかな果実味をブドウにもたらす。
ヴァレ・デュ・プティ・モラン地区の中心、フェールブリアンジュ村に根ざすのが、1848年からブドウ栽培を行うア・ベルジェールである。1991年生まれの五代目現当主、アドリアン・ベルジェールの下で大きな飛躍を遂げ、「情熱なくして偉大なものは生まれない。泡を造る前に上質なワインを造ること」を信条に、この地のテロワールの可能性を追求している。45haの畑のうち、35haはヴァレ・デュ・プティ・モランのフェールブリアンジュ、エトージュ、コンジーの3村に、残りの10haは、コート・デ・ブランのグラン・クリュ(アヴィーズ、メニル・シュール・オジェ、オジェ、シュイイ、クラマン)とセザンヌ地区に広がる。本拠地であるフェールブリアンジュ村の一部には、シャンパーニュでは珍しい、シレックス(火打石)を含む土壌が広がる。この特異なテロワールで育つブドウは、凝縮した果実味に加え、塩味やフレッシュさ、そしてワイン全体を引き締める高いテンションを備えると、アドリアンは語る。
ベルジェール家が自社でのシャンパーニュ造りを始めたのは三代目アルベールの時代となる1949年。その後、1986年には四代目アンドレがワイナリーを継承し、所有畑を6haから現在の規模へと拡大。土壌分析に基づいたブドウ品種の植え替えなども積極的に行った。アヴィーズとランスで学び、2014年に参画した五代目アドリアンは、それぞれのテロワールの個性を最大限に表現するため、区画ごとの醸造を導入し、ワイナリー初となるパーセレールシリーズの生産を開始。さらに従来の8,000kgのプレス機に加え、4,000kgと12,000kgのプレス機を新たに導入することで、ブドウの収穫量やキュヴェ毎に応じた、より精密な圧搾を実現。果汁への負担を軽減するグラビティ・フローシステムを採用し、よりピュアで表現力豊かな果汁を得られる礎を築いた。熟成においても、従来のステンレスタンクに加え、オーストリアのストッキンジェール社、フランスのキャヴァン社やセガン・モロー社といった名門メーカーのオーク樽を導入。ワイングローブ(ガラス製容器)も取り入れるなど、発酵・熟成方法にも多様性を持たせている。
アドリアンのワイン造りへの真摯な姿勢と取り組みは、ア・ベルジェールを国際的に高い評価を得るシャンパーニュ・メゾンへと押し上げた。世界的なワイン専門誌Decanterは、シャンパーニュのブラン・ド・ブラン テイスティングにおいて、ア・ベルジェールのワインにトップスコアを与え、「このワインはグラン・クリュやプルミエ・クリュの村ではない場所でも、いかに卓越したシャルドネが育成できるかを見事に示している」と、その品質を絶賛している。さらに、彼のワインはASSIETTE CHAMPENOISE(ランス)、MAISON LAMELOISE(シャニー)、LE MIRAZUR(マントン)など、フランス国内の三ツ星レストランでも採用されている。そして2025年、ア・ベルジェールはヴァレ・デュ・プティ・モランを代表する造り手として、フレデリック・サヴァール、ピエール・ペテルス、ピエール・パイヤールといった同地のトップ生産者が集う団体、Les Artisans du Champagneのメンバーに正式に迎えられた。これは、同団体のメンバーによる強い推薦によって実現したものであり、アドリアンが追求するテロワールへの情熱と、ワイン造りのビジョンが、同じ志を持つ仲間達からも高く評価されている証だと言えるだろう。今後の更なる飛躍が期待される注目の造り手だ。
商品コード:12260E
リンゴ、洋ナシの香りに貝殻のヒント。口に含むとふんわり柔らかな果実味が感じられ、フィニッシュでは高めの酸と硬質感ある口当たりが引き締めてくれる。柔らかさとスタイリッシュさを兼ね備えた味わい。
商品コード:12262E
商品コード:12267E
リンゴ、洋ナシに加えてスイカズラのような花のアロマが特徴的。鋭角的な酸と上品な花のフレーバーがフィニッシュまで伸び、余韻には澱由来の旨味が強く感じられる。タイトでありフローラルなシャンパーニュ。
商品コード:12263E
蜜リンゴやブリオッシュを思わせる甘やかで香ばしい香り。テクスチャーは柔らかく、旨味を強く感じられる。余韻に残る酸が引き締めを与え、全体的にエレガントな印象に仕上げている。
商品コード:12264E
商品コード:12265E
商品コード:12266E
リンゴ、洋ナシのアロマにヘーゼルナッツやトーストのヒント。比較的穏やかな酸と、強いエキス感を感じさせる果実味が感じられる。澱との熟成に由来する香ばしさ、旨味が特徴的なワイン。
商品コード:12261E