ヴェネト州で最も重要なワインの1つに数えられるソアーヴェは、古代ローマ時代から人々に愛されてきたイタリアを代表する白ワインであると言えるだろう。その生産エリアはヴェローナから東に30km程進んだソアーヴェ村やモンテフォルテ・ダルポーネ村周辺に広がる。1968年に制定されたソアーヴェD.O.C.は13村を包括する広域なアペラシオンで、栽培面積は6500ha以上、広大な平野部の畑から、アルプス山脈へと続く標高が最高で600mにもなる丘陵部の畑までをもカバーする。一般にソアーヴェと聞いて思い浮かぶフルーティーでシンプルなスタイルは、主に平野部の肥沃な沖積土壌の畑から造られている。これに加え、ソアーヴェの主要品種のガルガーネガは樹勢が強く豊産性で、アペラシオンの規定ではなんと1ha辺り105hlもの高収量が認められている。ソアーヴェに希薄で凡庸な安ワインのイメージがついてしまったのは、この平野部で造られた大量生産のワインが世の中に多く出回っていることが影響しているのは明らかだろう。ただし、D.O.C.制定以前からのワイン生産の歴史を持つソアーヴェ村とモンテフォルテ・ダルポーネ村にかかる丘陵部からのソアーヴェは全く別物のワインと言える。丘陵部の西側には石灰岩質が見られるが玄武岩質の火山性土壌が主体であり、自然と収量が落ちる古木も多く植わる事から、エキゾチックな果実味とともにまるでシャブリや偉大なモーゼルワインを思わせるような鉱質なミネラルを持つ力強いワインを生み出す。この「本来のソアーヴェ」を平野部で造られたソアーヴェと区別するため、現在では丘陵地帯を指定したソアーヴェ・クラッシコD.O.C.が制定されている。
ピエロパン、アンセルミと並び3大ソアーヴェと称えられるジーニはテロワールの優位性が認められたソアーヴェ・クラッシコ中心部に畑を所有し、1500年からブドウ栽培に携わってきた長い歴史を持つ。現在は16代目のサンドロとクラウディオ兄弟が率いており、兄のサンドロは2018年より2度目となるソアーヴェ・ワイン保護協会の理事を務め、高収量による品質低下が問題であった平野部の畑の生産制限を設ける改革に着手するなど、この地の功労者であり、ソアーヴェを代表する人物の1人である。2019年にはソアーヴェでもバローロと同様に33のクリュが正式に認められたが、ジーニの上級キュヴェは、フィッタ、フォスカリーノと並びクラッシコ生産エリア内で最も名高いクリュ、フロスカから生まれる。豊富な日照量に恵まれた南~南東向きの斜面にあたるが、「フロスカ=Cold」の名の通り夜には冷たい北風が吹きおろし、丘陵部全体でも昼と夜の気温差が最も激しい。そのため力強い熟した果実味がありながら、クリスピーな酸、鉱質なミネラルが魅力のスケールの大きなワインとなる。その中でもサルヴァレンツァはフロスカ内で最も古いブドウが植わる区画で平均樹齢は80年、その内の1/3がプレ・フィロキセラの樹齢100年以上の自根の古木だ。根は10m近くまで深く伸び、火山性土壌由来のミネラルをしっかりと吸い上げワインに映し込む。自根由来のパワーと複雑さ、豊かな果実味、ミネラル、酸が1つとなった彼らのトップキュヴェ、サルヴァレンツァの熟成ポテンシャルは10〜20年にも及ぶ。
栽培、醸造ともに共通するジーニのポリシーは「自然を尊重し、伝統を守り続けること」。1985年には当時革新的であったSO2無添加のワイン生産にも挑戦し、早くからナチュラルなワイン造りを追い求めたワイナリーの1つでもある。伝統的な棚仕立ての畑をオーガニック農法で管理し、畑は森の延長にあるかのごとく様々な植物で溢れている。手摘みでの収穫はブドウの熟度を見極めるために3回にも分けて行われる徹底ぶりだ。グラビティ・システムを採用したカンティーナでは、自生する野生酵母で自然発酵させ、SO2の添加を最低限に抑える。人の手の介入を最小限に抑え、自然に寄り添う事こそがワインのポテンシャルを最大限に引き出すとサンドロは語る。Gambero Rossoは「ジーニ兄弟は、ソアーヴェの名を偉大なものにした貢献者の一人であり、その土地とブドウに強い絆を持ち、フィネス溢れる長期の熟成に耐えうるワインを生み出す」と評し、マット・クレイマー、アントニオ・ガローニ、ジャンシス・ロビンソンなど錚々たるワイン評論家もソアーヴェのトップ生産者としてジーニの名前を挙げている。さらに、2017年には、彼らのスタンダード・キュヴェであるソアーヴェ・クラッシコがWine Spectator誌のTop 100 Winesに選出された。ジーニのワインはソアーヴェの最高峰であるだけでなく、世界屈指の白ワインと言っても過言ではない。
商品コード:11149E
リンゴとピンクグレープフルーツのソルベ、レモンライムのアロマに、ハチミツを含むような甘やかな白い花々のヒント。そこにアーモンドのニュアンスが加わり、ピュアでありながらも複雑味がある。ジーニの畑を最大限に表現した1本。
商品コード:08377E
フロスカ=Coldの意。夜に吹き付ける冷たい風によりエレガントでフィネスに富む素晴らしいアロマを生み出す銘醸畑。ドライレモンやスイカズラのフレーバーに砕いたアーモンドのニュアンス、塩味がかったミネラルと明るい酸のバランスが素晴らしい。
商品コード:08378E
サルヴァレンツァは、この地で山賊に襲われていたところを救われた年若い女性の名に由来する。ブドウ樹の1/3はプレフィロキセラで接ぎ木なしの貴重な古樹の区画。アプリコットや洋梨、熟したレモンの重厚感が、歴史あるブドウの存在を感じさせるフルボディ。引き締まった酸とミネラルの骨格がボディを支えている。
商品コード:11148E
ソアーヴェ地区との境界部分にあるミラベッロの丘にある畑。日当たりが良く、取り囲むように自生するブラックベリーの木々が繊細なブドウ畑を守り、素晴らしい環境を作り出している。ドライストロベリーやチェリーのノートにアロマティックなお茶のエレガントなニュアンス。さらにチョコレートやスパイス、ドライハーブのヒントが官能的な魅力を添える。