イタリア20州の中で最も小さいヴァッレ・ダオスタ。イタリアのワインガイドで「ヴァッレ・ダオスタでも指折りの醸造家」と評される注目の造り手。
イタリア20州の中で最も小さいヴァッレ・ダオスタ。イタリアのワインガイドで「ヴァッレ・ダオスタでも指折りの醸造家」と評される注目の造り手。
フランスとスイスの国境に接し、イタリア20州の中で最も小さいヴァッレ・ダオスタ。総面積の約85%を丘陵・山岳地帯が占める険しい土地であり、ブドウの栽培面積、ワインの生産量においても最小の州である。州唯一のDOCエリアはドーラ・バルテア渓谷沿いに広がり、日当たりの良い急勾配の山肌にぴったり寄り添うように設けられたテラス状の畑でブドウが栽培されている。長い極寒の冬と、暑さの厳しい夏という大陸性気候で、イタリア全土でも類をみないほど降水量は少なく、この乾燥した気候と通気性の良さのおかげでブドウはカビなどの病害にかかりにくい。また、アルプスの山間部にあるため、畑の標高は高く、日照時間は短いが、昼間は背後にそびえるモンブランからの照り返しにより畑の気温が上がり、夜は急激に気温が下がるため、果実がゆっくりと熟し、熟度と酸度のバランスが良いブドウが得られる。
機械作業など不可能な急峻な斜面の畑を見ればわかる通り、この地のブドウ栽培は容易ではない。狭小の畑のみを所有し、瓶詰めまでを自社で行うのが困難な生産者が多い一方で、アルプスの山々に抱かれた美しいテロワールを映し出す宝石のようなワインで注目を集める造り手も存在する。州都アオスタ近郊のクアートにて、代々ブドウ栽培を行ってきたグロジャンもその一人である。1969年にドーファン・グロジャンが元詰めを開始して以来、5人の息子とともにクオリティを求めてワイン造りに打ち込んできた。10haの所有畑はクアートと隣村のサン・クリストフにあり、標高の高い畑によく見られる痩せた砂と石灰からなる土壌を持つ。ピノ・ノワールやピノ・グリをはじめ、フミンやプティ・ルージュ、コルナリン、プティット・アルヴィーヌなどヴァッレ・ダオスタならではの土着品種が植えられている。
「長年のブドウ栽培の経験から、土壌が生き生きとしていればブドウの樹はより高いクオリティの実をつけ、ひいてはより複雑でナチュラルかつ、テロワールを反映したワインが生まれると気付いた」という彼らのモットーは『自然なワイン造り』。1975年には殺虫剤や防ダニ剤の使用を中止。長年オーガニックの調剤や堆肥のみを用いる有機農法で世話された畑は野草に覆われており、動植物相が豊かだ。将来的にはビオディナミへの転換も視野に入れており、その最初のステップとして2011年よりビオロジック認証を取得予定である。醸造においても天然酵母による発酵や、SO2の添加量を抑えるなど、昔ながらの自然なワイン造りを続けている。現在醸造を担当するのは5人兄弟の長兄ヴァンサン・グロジャン。レ・クレーテやアンセルメなどトップ生産者が集うヴァッレ・ダオスタの生産者団体の会長を務める彼は、イタリアのワインガイドで「ヴァッレ・ダオスタでも指折りの醸造家」と評されている。Gambero Rossoでは2009年度版以降、3年連続トレ・ビッキエーリを獲得。2011年度版にてヴァッレ・ダオスタの白の土着品種で初のトレ・ビッキエーリに輝いたプティット・アルヴィーヌや、他のイタリアの産地のピノ・ネロとは一線を画すピノ・ノワールなど、彼らのどのワインにも涼やかな山の気候を反映した気品と、凝縮したアロマ、そして自然の滋味が満ちている。
商品コード:11300E
自生のミュスカが生まれた、歴史的で最も重要とされるクリュ、シャンバーヴのブドウのみを使用。標高500mで南東向き。白い花や桃にミントやセージのアロマ。複雑でアロマティックなブーケを持ち、味わいはしっかりドライ。
商品コード:08340E
クアート最高のクリュのひとつと評されるヴィーニュ・ロヴェッタは、グロジャンが復活させた畑。海抜550mにあり、通気性が良い。涼しい気候と砂と石灰から成る土壌は、スイスからもたらされた砂地の畑を好む晩熟の品種、プティット・アルヴィーヌに最適のテロワール。黄色い花や甘いオレンジ、アプリコット、洋ナシを思わせるフローラルな香り。肉厚な果実と緊張感ある酸のバランスが秀逸で、エネルギーとフレッシュさに溢れている。香り高さと濃密さというこの品種の美点とテロワールをよく表現していると、専門各誌でも評価が高い。
商品コード:08341E
すり鉢状の地形にある急斜面に位置し、冷たい風から守られた特殊なテロワールを誇るヴィーニャ・ズリアットも、クアート最高のクリュのひとつと名高い。海抜800mにあるため、周囲の畑よりも収穫は遅く、フェノール成分が良く熟した、糖度と酸度のバランスがより優れたブドウが得られる。野生のベリーやスパイスの力強く複雑な香り。果実の濃厚さではなく、エキスの密度で魅せる味わいは非常にバランスが良く、余韻も長い。パワーを求めがちなイタリアにおいて、これほどナチュラルで滋味に満ちたクオリティの高いピノ・ノワールは稀である。