シャンパーニュ・オーロール・カサノヴァは、元プロのバレエダンサーの妻オーロール・カサノヴァと、医療分野で働いていた夫ジャン・バティスト・ロビネという異色の経歴を持つ夫婦が営むワイナリーである。それぞれシャンパーニュのブドウ栽培に携わる家系にルーツを持ち、オーロールはブドウ栽培家の母とIT技術者の父のもとパリで育った。母はシャンパーニュの畑へ頻繁に通いながらブドウ栽培を続けており、その姿を間近で見て育ったオーロールにとって、シャンパーニュの地は幼少期から身近な存在であった。オーロールは世界的なバレエ団で活躍後、自然豊かなシャンパーニュへの思いが再燃。表現者としての道を今後は”女性醸造家”として歩むことを決意し2011年にシャンパーニュへと帰郷した。夫のジャン・バティストも、ブドウ栽培家の家系に生まれ、シャンパーニュ地方で育ったが、医療分野に進み、カーボン製の義肢装具のデザインなどに携わっていた。二人は2011年、アヴィーズでのブドウ栽培と醸造の研修で出会い、2013年に家族から受け継いだ畑を基にドメーヌを設立。最初の数年間はメニルにあるガレージを間借りし、プレス機などの設備も周囲に借りながら、ワイン造りを開始した。2018年には念願のセラーをマルドゥイユに購入。古い蔵であるため、決して煌びやかな設備が整っている訳ではないが、伝統的なバスケット・プレスも1台備え、思い描いたワイン造りを実践できる土台を整えた。夫のジャン・バティストはワイナリー設立前には、アイ村のロジェ・プイヨンで研修を受け、そこで初めて樽による自然酵母発酵や、馬による耕作、土壌管理の重要性に触れ、大きな感銘を受けたという。さらにオーガニック栽培や醸造のノウハウを深めるため、二人はアンセルム・セロスにも教えを乞い、一流の生産者達との交流を通じて、自らの哲学を磨いていった。
二人のフィロソフィーは「地球環境への配慮と人的介入の制限、そして家族から受け継いだ異なる区画の特性を深く理解し、表現すること」。化学物質は使用せず、オーガニック農法を実践し、一部ビオディナミも取り入れる。資源の使用を最小限に抑え、健康な土壌を次世代に引き継ぐことを重要視している。現在は4.8haの畑を所有し、グラン・クリュのピュイジュー(モンターニュ・ド・ランス)、ル・メニル・シュール・オジェ、オジェ(コート・デ・ブラン)、さらにシャンヴォワジー、エペルネ(ヴァレ・ド・ラ・マルヌ)といった5つの村に26区画が点在する。2023年にはフランスのオーガニック認証であるABマーク(Agriculture Biologique)を取得。ブドウの耐病性を高めるために、ティーや煎じ液の散布、樹液の流れを尊重した剪定、降水量に応じた草生管理、表層のみの耕作を実施している。収穫時は、成熟度の見極めはもちろん、温度管理にも工夫を凝らし、通常使用されるグレーや黒色ではなく、白色の収穫カゴを採用することでブドウの温度上昇を抑えている。実際に濃い色の収穫カゴに入れられたブドウと比較して約2℃の温度差が確認されており、ブドウのフレッシュさや繊細な風味の維持に努めている。醸造では、介入を抑えたナチュラルな醸造プロセスを採用しており、区画ごとに圧搾・醸造し、軽いデブルバージュ後、各区画のワインを自然酵母で発酵させ、上級キュヴェについてはオーク樽で澱と共に最低11ヶ月間熟成後、ビオディナミのカレンダーに則り、瓶詰やデゴルジュマンを行う。また、生産者間の交流を活かし、ワイナリー開始当初から、ヴァン・クレールの発酵に、セロスやエグリ・ウーリエ、タルランから譲り受けた古樽も使用している。
オーロール・カサノヴァのシャンパーニュはL’assiette Champenoise(ランス***)やTim Raue(ベルリン**)といった世界の星付きレストランでも採用されており、2023年からはシャルトーニュ・タイエやアグラパールなど同産地を代表する一流生産者が所属する団体、テール・エ・ヴァン・ド・シャンパーニュの一員にもなっている。2021年にドメーヌを訪問したWine Advocateのウィリアム・ケリーは「私が試飲したワインは、繊細な骨格でありながら力強く、凝縮感と緻密さがありながらも軽やかさも保っており、”遊び心がある”と言いたくなるほどだ。この最初の訪問は興味深いもので、今後もカサノヴァの活動を追い続けるのが楽しみだ」と記している。今後、ますます注目を集めることは間違いないが、年産本数は22,000本程度と非常に限られている。見つけたらぜひ手に入れたい1本である。
商品コード:12322E
モンターニュ・ド・ランスとヴァレ・ド・ラ・マルヌに広がる複数区画のブドウを使用。 熟した洋ナシや白桃の豊かな果実味に、ブリオッシュのアクセント。透明感のある柔らかな輪郭を、生き生きとした酸と細やかなミネラルが支えている。
商品コード:12324E
グラン・クリュ、ピュイジュー内のリュー・ディ「レ・プティット・ヴィーニュ」に植わる1986年植樹のシャルドネを使用。
商品コード:12325E
グラン・クリュ、ピュイジュー内のリュー・ディ「レ・プティット・ヴィーニュ」に植わるピノ・ノワールを使用。1968~1969年にマサル・セレクションで植樹された区画。
商品コード:12326E
グラン・クリュ、メニル内のリュー・ディ「マロ」に植わる1990年植樹のシャルドネを使用。
商品コード:12327E
メニルとピュイジュー、2つのグラン・クリュが融合。メニルのリュー・ディ「マロ」と、ピュイジューのリュー・ディ「ローズ・エ・ジュテ」、それぞれの個性が調和し、唯一無二の卓越したシャンパーニュを生み出す。オーロールとジャン・バティストの絆になぞらえた、ドメーヌの最高傑作。
商品コード:12323E
モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌの区画に加え、リセのピノ・ノワール(赤ワイン)をブレンドし造られるロゼ・シャンパーニュ。熟した赤いベリーやイチゴの生き生きとしたアロマ。ふくよかで丸みのある味わいには、きめ細やかな泡が美しく溶け込んでいる。