ジェルマンは1955年に現当主アルノー・ジェルマンの祖父であるベルナール・ジェルマンによって創設された。自然と伝統に根ざしたワイン造りは、サン・ロマンの小さなブドウ畑から始まり、当初は瓶詰をほとんど行わず、バルク販売が主流だった。しかし、ポマール、ボーヌ、オート・コート・ド・ボーヌといった銘醸地に畑を拡大し、自社瓶詰めを始めたことで、1968年にはパリのアグリコル・コンクールで銀メダルを獲得し、その名声を確立した。1976年には息子のパトリックがドメーヌに加わり、妻とともに国際市場へ進出した。1983年にはベルギーのワインフェアなどにも出展し、ジェルマンの名は世界へと広がっていった。また、この時期からレストランなどへの直接販売を開始した。2009年には創設者ベルナール・ジェルマンの孫であり、現当主であるアルノー・ジェルマンがドメーヌに加わった。アルノーは自らのネゴシアン部門「メゾン・アルノー・ジェルマン」を設立し、ムルソー、ヴォルネイ、シャンボール・ミュジニー、ピュリニー・モンラッシェなどをラインナップに加えた。現在はフランス全土、ヨーロッパ、そして海外に広く流通しており、サン・ロマンに10ヘクタール、ポマールやボーヌなど他のエリアに6ヘクタール、合計で16ヘクタールの畑を所有している。

畑にはいずれも平均樹齢が50年を超える古樹が多く植えられており、これらの畑は丁寧に手入れされ、ブドウ本来の個性を最大限に引き出すための細やかな管理が行われている。アルノーは畑仕事においても細部に及びこだわりを持っている。例えば彼は最新のトラクターではなく、あえて古いシングルロートラクターを選ぶことで、土壌への負担を減らしながら操作感覚をより正確に保っている。また、除草は手作業で行い、グリーンハーベストで1株あたり7〜8房に絞るなど、徹底した品質管理を行っている。

醸造においても強いこだわりを持ち、伝統を尊重しながら、革新を取り入れたワイン造りを追求している。2年間の試験運用を経て導入した卵型コンクリートタンクは、自然な対流を促しながらも、樽のように風味を加えず、ブドウ本来の個性を純粋に引き出すことができる。2024年にはさらに10基を追加し、白ワインの熟成には樽とコンクリートタンクを50:50で使用できるようになった。将来的には赤ワインにもこの技術を導入する予定だ。

ジェルマンのワインは、その繊細で洗練された味わいから、フランス国内外の名だたるレストランで提供されている。ピュリニー＝モンラッシェに位置するミシュラン三つ星レストラン「ラムロワーズ」や、アルザスの二つ星「オーベルジュ・ド・リル」など、多くの名店で高く評価されている。