ヨーロッパ最大の活火山として有名なエトナ山、その麓には真っ黒な溶岩に覆われた部分と緑の草原の部分のコントラストが興味深い肥沃な大地が広がっており、はるか紀元前の昔から土着のブドウが栽培されてきた歴史を持つ。ワインとしてもシチリアで最も早くDOCに認められたこの地エトナだが、90年代にバローロボーイズを率い、近代的なアプローチを持ち込むことでその当時世界市場から置き去りにされていたバローロの人気・知名度を再復興させた最大の立役者マルコ・ディ・グラツィアがこの地に興したのがテッレ・ネーレである。彼はもともとバローロのみならずイタリア全土から素晴らしい品質のワインを見つけ出し、世の中に知らしめるワイン商として頭角をあらわした人物だが、その中でエトナの独特なテロワールに触れ心奪われたことで自らこのエトナでワイナリーを立ち上げることにしたのである。
マルコを魅了したその独特なテロワールとは言うまでもなくエトナ山による賜物であり、50万年にも及ぶ火山活動によって生まれた複雑で唯一無二のものである。ワイナリー名となっているテッレ・ネーレとは「黒い大地」を意味しているが、エトナに広がる畑の溶岩や火山灰を豊富に含む独特な黒い土壌そのものから名づけられており、その土壌構成は少し距離が離れただけで噴火によって受けた影響の歴史が異なるため大きく異なったものになることもあるという。そしてその特異な土壌だけでなく、畑の広がる標高も400~1000mまでと他のワイン産地を見渡しても見当たらないほど稀有な幅広さがあり、この独特かつ複雑な土壌と標高差の掛け合わせがイタリア全土の産地を見てきたマルコにとって非常に魅力的に映ったのはごく自然なことだった。また加えてその標高の高さからヨーロッパ全体を襲ったフィロキセラ害から逃れた古樹が多く残っていたこと、そして昼夜の寒暖差が他のどの地域と比べても大きかったこともその魅力を増幅させる大きな要因であった。これら複数の要因が絡み合ったこの特別な地から生まれるワインは、総じてエレガンスに溢れ香り高く、そして区画によって違った表情を見せるというまさにブルゴーニュ的側面を持っているのである。
ワイナリーが所有する畑は、古くから赤品種のネレッロ・マスカレーゼにとって最高とされてきたエトナ山北側のコントラーダ(クリュ)に7区画、そして東側と南側に1区画ずつあり、それぞれに適した品種が植えられているが、テッレ・ネーレがその区画ごとでの醸造・瓶詰をエトナにおいて初めて取り組み、その多面的な魅力を表現するという極めてブルゴーニュ的なアプローチを行った最初のワイナリーとして大きな功績を残したことは忘れてはならない事実である。
ワイナリーの信念は明確で「それぞれのテロワールが持つ様々な特徴をできるだけピュアに表現すること」であり、それはつまりこの古代からの火山地帯の「小宇宙」とも呼ぶべき多面的な個性を、常に敬意と配慮を持った賢明な農作業によって表現することとしている。そのため2002年の設立当初からオーガニック栽培を採用しており、畑作業において最高の質のブドウを得るための努力を何よりも最優先に行い、そうして得られた最高の質のブドウを活かすべく醸造面においてはできる限り余計な介入を避け、ブドウの育ったテロワールをそのまま表現することに心血を注ぎ続けているのだ。その姿勢は設立から20年以上経って国際的な注目がエトナに集まるようになった今でも変わらず継続されており、今後もこの産地を代表する生産者であり続けることは間違いないだろう。
商品コード:10510E
北側、東側、南側それぞれの斜面にある複数のコントラーダから採れたブドウをバランスよくブレンドして生産。柑橘類のフレッシュな香りにフラワリーなトーンが漂い、デリケートな口当たりとバランスの良さから一見シンプルに感じられるが、いつまでも飲み続けていられる心地よさがある。
商品コード:11575E
北側斜面の標高600~700mにあるコントラーダ、カルデラーラ・ソッターナのブドウを使用。火山灰は少なく、黒々としたこぶし大の軽石が表土のほとんどを覆うほどに存在する特徴的な土壌で、この畑には代々赤品種のみが植えられてきたが「長熟で偉大な白を生み出したい」という思いから2007年に一部を白品種に改植し、2014年から生産を開始。思惑通り、白のラインナップの中で最も濃厚で男性的、そして長熟のポテンシャルを秘めた荘厳なものとなっている。
商品コード:11576E
北側斜面のランダッツォとカスティリオーネ・ディ・シチリアに所有する標高600~900mの畑からのブドウをブレンドして生産。薄くはないが軽やかで、渋みは強すぎないが程よい緊張感がある、いわば「白のボディと赤の味わいを併せ持つ」というスタイルを理想として作られているロゼ。
商品コード:11251E
北側斜面のランダッツォとカスティリオーネ・ディ・シチリアに所有する標高600~900mの畑から、若木~樹齢50年程度のブドウを幅広くブレンドして生産。若いうちから非常に優れたフィネスを備えており、フレッシュで香り高く、細身で適度なタンニンがあり、独自の自然なエレガンスを備えている。ワイナリーの名刺代わりとなる1本。
商品コード:11583E
北側斜面の標高700~850mに広がるコントラーダ、サント・スピリトのブドウを使用。火山灰の豊富な深さのある土壌で、出来上がるワインは肉付きが良く官能的で、豊かで包み込むようなスタイルに仕上がる。ただ同時にピュアであり、洗練された優しさも持ち合わせている。
商品コード:11950E
北側斜面の標高600mほどにあるコントラーダ、フェウド・ディ・メッツォのブドウを使用。火山灰豊富な浅い土壌で、最も気温も高くなる区画のため果実が柔らかく大らかに表れやすく、ほのかなスパイスのヒントを備えながらも最も近づきやすい滑らかさを持ったワインとなる。
商品コード:11577E
北側斜面の標高600~700mにあるコントラーダ、カルデラーラ・ソッターナのブドウを使用。火山灰は少なく、黒々としたこぶし大の軽石が表土のほとんどを覆うほどに存在する特徴的な土壌で、樹齢50~100年の古樹がほとんどを占める。単一畑のラインナップの中で最も多くのアロマやフレーバーを備えていながらバランスが整っており、満足度と軽やかさを両立したエレガンス溢れるワインとなる。
商品コード:11582E
北側斜面の標高800~850mにあるコントラーダ、サン・ロレンツォのブドウを使用。この区画は最も寒さの厳しいエリアで、土壌はほぼ火山砂(火山の噴火によりできた堆積土で、粒の大きなもの)からなり、この独特な組み合わせから生まれるワインは凝縮感と骨格がありながら大らかさを併せ持つ贅沢な味わいとなる。
商品コード:11581E
北側斜面のコントラーダ、カルデラーラ・ソッターナ内にある標高620m、僅か0.8haの区画(通称:ドン・ペッピーノの畑)に生えた樹齢140年以上、もちろんプレフィロキセラの超古樹から採れたブドウを使用。華やかでありながら深みのある香りと果実味で、ボリュームと厚みがありながらも非常に繊細。この特別な区画からしか生み出せない、ワイナリーの偉大なトップキュヴェ。