ポルトガル北西部、ヴィーニョ・ヴェルデ地方のサブリージョンであるアマランテに位置するキンタ・ダ・カルサダは、1917年に創業された家族経営のワイナリーである。フランスにて醸造学を修めた創業者アントニオ・ド・ラーゴ・セルケイラは、当時のヴィーニョ・ヴェルデに革新的な栽培・醸造技術を持ち帰っただけでなく、ポルトガルの外務大臣を努めた経験を活かし、この地のワインビジネスを大きく発展させた。同地域で最初にワインの輸出を始めたキンタ・ダ・カルサダは、1917年植樹というヴィーニョ・ヴェルデで最も古い畑と、ワイナリーとしての最古の歴史を持つ。アントニオがワイナリーを設立した16世紀の邸宅「カーザ・ダ・カルサダ」は、現在、ミシュラン星付きレストラン「ラルゴ・ド・パソ」を併設するブティックホテルとしても知られ、その歴史と魅力が融合した空間となっている。
キンタ・ダ・カルサダの本拠地となるアマランテは、ヴィーニョ・ヴェルデの南東部に位置し、大西洋の影響は弱まる分、昼夜の寒暖差が大きい比較的内陸性の気候を特徴とする。花崗岩主体の土壌に一部片岩が混在し、タメガ川を通じて大西洋からの風が運ばれることで、独自のマイクロクライメイトを形成している。この環境が、ブドウの樹上での成熟期間を長くし、酸味とアルコールのバランスがとれた、豊かな風味のワインを生み出す。特にアヴェッソやアザルといった在来品種からは、ミネラル感と塩味のニュアンスを持つ白ワインが造られている。
ワイナリーでは、自然を尊重し、極力介入を控えることを哲学に掲げている。70haある畑はリュット・レゾネで管理され、ブドウは手作業で選別し、最適な成熟度を見極めて収穫される。醸造では伝統的手法を採用し、果実の自然な特性を最大限に引き出すことを目指す。2012年からは、ライジング・スターとして注目を集めるワインメーカー、ジョアン・カブラル・デ・アルメイダがチーフ・ワインメーカーとしてワイナリーに加わった。リスボンで農業工学を学び、ヴィーニョ・ヴェルデ、ダン、ドウロ、さらにはアルゼンチンでもワイン造りに携わった経歴を持つ彼は、ヴィーニョ・ヴェルデで最も著名な醸造家であるアンセルモ・メンデスのもとで研鑽を積んだ。彼の目指すスタイルは、テロワールのキャラクターを表現するフレッシュでエレガントなワインだ。また、「ワインは食事と楽しむもの」というポルトガルの伝統的な価値観を重視し、地元の文化や料理、特に新鮮な魚介類に合うワインを志向している。自社のレストラン「ラルゴ・ド・パソ」では、これらのワインが料理とともに提供され、上質なダイニング体験を演出している。
Wine Advocateでポルトガルを担当するマーク・スクワイヤーズは、キンタ・ダ・カルサダを「この地域に長い歴史があるにもかかわらず、まだあまり知られていない有望な生産者の一つ。将来的により高い評価を得ていくであろうドメーヌとして注目すべき存在だ。」と高く評価している。「ほとんどのワインがリリース後に良くなっているのは良い兆候。一度付けた点数を上げることはあっても下げることはないだろう」という彼の言葉は、キンタ・ダ・カルサダのワインの品質と将来性に対する確信を裏付けている。料理との素晴らしい相性に加え、高いコストパフォーマンスを見せる彼らのワインは、ヴィーニョ・ヴェルデの魅力を堪能するのにうってつけの1本と言えるだろう。
商品コード:12366E
レモンやオレンジの柑橘のアロマに、ほんのりヨードのニュアンス。果実味豊かなスタイルで、フレッシュな酸と余韻に残るほのかな塩味とのバランスが素晴らしい。ラベルにはポルトガルの偉大な詩人であるルイス・デ・カモンイスが描かれている。