ピエモンテ州南東部、アレッサンドリア県トルトーナの街を中心にして広がるコッリ・トルトネージD.O.C.は、少なくとも14世紀にはワイン生産をしていた記録が残るにも関わらず、長らく知名度の低い産地に甘んじていた。しかし今、土着品種ティモラッソから造られる高品質な白ワインにより一躍世界の注目を一身に集めている。このエリアの復活の鍵となったティモラッソ種はかつてワイン及び生食用としてアレッサンドリア県、ひいてはピエモンテ州で最も賞賛された白ブドウの1つであり、トルトーナ丘陵部に2000haもの栽培面積を誇ったという。しかし花振るいが起こりやすくカビ病への耐性が低いことから、20世紀初頭のフィロキセラ被害後には、赤ワイン需要やガヴィ人気の高まりを背景に、より丈夫で収量が見込めるバルベーラとコルテーゼに改植されてしまった。その後長らくの間、近隣のバルベーラ・ダスティD.O.C.GやガヴィD.O.C.の後塵を拝してきたコッリ・トルトネージであったが、この地のポテンシャルを証明しようと立ち上がったヴァルテル・マッサを初めとする一部の生産者がティモラッソに目をつけ再植樹を始めた事からその運命を大きく変える。堅固で力強くミネラル分豊富で、よく造られたワインは驚く程に長命なワインになると評されるティモラッソは、瞬く間にワイン評論家やワイン通の注目を集めたのだ。1999年には僅か3haのみであったティモラッソの畑は現在では180haまで成長、およそ50ものワイナリーが手掛けており、ボルゴーニョ、ロアーニャ、ヴィエッティなどランゲの錚々たるワイナリーも参入し、意欲的な造り手達による更なる品質向上が進んでいる。
2018年設立のモンリアはそんなティモラッソへの情熱溢れる若き4人組による新しいプロジェクトだ。メンバーは、バローロで最も長い歴史を持つ造り手と呼ばれるオッデーロの7代目ピエトロ・オッデーロとイザベラ・オッデーロ、そしてラ・モッラ村のレストラン「Osteria More e Macine」のオーナーでワイン流通にも携わるファブリツィオ・ボルゴーニョとステファノ・カルボーネ。ワインと食に精通したこの強力なタッグの目指すゴールは、ネッビオーロと同様にテロワールを如実に反映し、優れた熟成能力を備えるティモラッソから、偉大なバローロに比肩する白ワインを生み出すことだ。
ティモラッソは原産地以外の気候条件への適応性が低く、海抜250m以上、降水量が限られた痩せた石灰質土壌で最も高いパフォーマンスを発揮すると言われている。ピエモンテ内で最も雨の少ないコッリ・トルトネージエリア、中でもトルトーナ丘陵部はその全てを兼ね備える最上の土地とされ、トルトーナの街は古代ローマ時代「デルトーナ」と呼ばれた事から、この最上の地で造られる特別なティモラッソのみが「デルトーナ」と呼ぶことを許されている。ティモラッソのパイオニアであるヴァルテル・マッサの助けを借りて、4人は2017年にトルトーナ丘陵部のモンレアーレ村に共同で理想の畑を購入。面積は僅か1.5ha、標高350mの丘の頂上部分で、僅かに粘土を含む石灰質土壌。リグーリア海から吹く涼やかな風がティモラッソの大敵であるカビ病からブドウを守ってくれる。ワインの醸造はオッデーロの醸造チームが自社セラーで手掛けており、手作業で収穫したブドウは厳しい選果の後、大樽とステンレスタンクで発酵。熟成期間が長いほどその魅力を発揮すると言われる品種のため、澱と共に約1年熟成させリリースする。
ジャンシス・ロビンソン誌でイタリアワインを担当するウォルター・スペラーは、「常にヴァルテル・マッサのティモラッソがもてはやされるが、若きピエトロ・オッデーロの手掛けるティモラッソは見逃すことが出来ない」として、彼らのファーストヴィンテージの2019年にヴァルテル・マッサに並ぶ最高スコアを与えている。今後さらに注目が集まる事は間違いないが、年間生産本数4000本と極めて少ないことから入手するのは非常に困難である。
商品コード:10843E
華やかなレモンや青リンゴにオレンジの花のニュアンスが加わり、洗練されたフローラルなノートが広がる。ボディはオイリーさを感じさせるほどのリッチさがあり、鮮やかで直線的な酸と輝きのあるミネラルがワインの骨格を構成している。赤ワインを思わせるほどの複雑さと熟成ポテンシャルを持つ深みある白ワイン。