ラクジュアリー・キュヴェでしか味わえないこの村のブドウを、スタンダード・キュヴェに贅沢に使用。
ラクジュアリー・キュヴェでしか味わえないこの村のブドウを、スタンダード・キュヴェに贅沢に使用。
17あるシャンパーニュのグランクリュのうち、いち早くこの格付けに認定された村のひとつがアイである。ヴァレ・ド・ラ・マルヌに位置するこの小さな村は、昔から最高のピノ・ノワールを生む土地として、王侯貴族や法王の寵愛を受けてきた。また現在では、ボランジェやドゥーツ、ゴッセなど著名生産者の拠点としても知られている。同じくグランクリュであり、偉大なピノ・ノワールの地として双璧をなすヴェルズネイの魅力が北向き斜面が生む精緻な酸や伸びやかさ、堅牢な骨格だとすれば、アイは南向き斜面の豊富な日照を感じさせるふくよかな果実と大らかさ、芯が詰まった濃密さでグランクリュの王の地位を確固たるものにしている。1905年にシャンパーニュ造りを開始したリシャール・フリニョーは、アイ(3ha)とすぐ東隣のプルミエ・クリュ、マルイユ・シュル・アイ(0.5ha)に畑を所有する造り手である。元々エペルネの栽培家だったが、1918年にポテンシャルを見込んだアイに拠点を移し、現在に至る。かつては自社畑からシャンパーニュを造る一方、ネゴシアン部門も運営していたが、幼少の頃よりシャンパーニュ造りの手ほどきを受けてきた4代目の女性当主ナデージュ・リシャール・フリニョーは所有畑のテロワールをより反映したクオリティの高いシャンパーニュを求め、現当主5代目である息子のジェムスとともに1998年からレコルタン・マニピュランのみに専念している。自然な果実をシャンパーニュに留めることをモットーに、栽培にはリュット・レゾネを採用。ベースワインの醸造では、果汁は一番搾りのキュヴェのみ用い、ブドウが本来持つ酸を変質させないよう、マロラクティック発酵は行わない。
非常に小規模な蔵ゆえに知名度は低いが、これまで8,500種以上のシャンパーニュを試飲してきた前述の評論家リチャード・ジューリンが「最も心に留めているシャンパン・ハウスのひとつ」と3ツ星評価する優れた造り手である。彼は著書の中でリシャール・フリニョーをこう評している。「オークは使っていないが、フリニョーのワインのリッチさはボランジェを思わせる。このシャンパーニュは、酸フェチやワインの中にエレガンスを見出そうとしている人向きではない。フリニョーが偉大なのは、この小さな町からのものにちょうどあるべきパワーと味わいの豊かさを基としていることだ」。彼の言葉通り、リシャール・フリニョーの魅力は豊かな果実と大らかさ。アイの特性を十二分に発揮したシャンパーニュなのである。2015年より、マルイユの畑のブドウは全てネゴシアンへ販売し、さらなる高品質を目指すべくアイのブドウのみを使用したシャンパーニュ造りに方向を転換。この頃から遺産相続で兄弟ともめており、ジェムスは自分のシャンパーニュを造り続けるため母ナデージュと二人体制となる新生リシャール・フリニョーを2018年に設立。さらに非常に小規模であるが個人名を冠した二つのワイナリー(ジェムス・リシャールとナデージュ・フリニョー)も作り、プレステージキュヴェの生産に情熱を捧げている。ますます注目度の高まる彼らのシャンパーニュを決して見逃してはならない。
商品コード:10329E
フレッシュなリンゴや洋ナシ、オレンジピールを思わせる豊潤なアロマ。赤系や黒系ベリーを思わせるきめ細かく柔らかな果実に輝くような酸。ゆったりと広がる味わいは徐々に重量感を増し、ミネラリーなフィニッシュへと続く。アイのブドウのみをブレンドしたグランクリュにふさわしいふくよかなシャンパーニュ。
商品コード:10328E
アイはピノ・ノワール最上のグランクリュとして名を馳せるが、シャルドネも村全体で1割のみ栽培されている。リシャール・フリニョーでは、海抜400mの斜面最上部に所有するわずか1haのシャルドネの区画から、アイ100%の希少なブラン・ド・ブランも手掛けている。熟した洋ナシやリンゴなど、白から黄色の果実が豊かに香る。鋭角的な酸に続くハリのある果実。綿密なテクスチャーと丸く均等に広がる味わいは正しくアイ。