フィレンツェから車で約2時間、ティレニア海と山に挟まれた小村ボルゲリは、かつてマラリアが蔓延する湿地帯で、1900年代初頭の干拓までは居住すら難しい土地だった。しかし1940年代、桃やイチゴが植えられていた農園に初めてカベルネ・ソーヴィニヨンが導入されると、驚くほど高品質なワインが生まれる。温暖な地中海性気候、海風と丘陵の冷涼な風に恵まれたボルゲリは、濃厚さと優美さを併せ持つボルドー品種の理想的な産地として急速に評価を高めていった。その後ガヤら名門も進出し、1983年にはボルゲリD.O.C.が誕生するが、赤ワインは認められず、生産者はヴィーノ・ダ・ターヴォラ(VdT)として造るしかなかった。それでもその味わいは世界を魅了し、「スーパータスカン」と呼ばれ高値で取引される存在となる。1994年にようやく赤ワインが法的に認可されるが、スーパータスカンという概念は今も息づいている。なかでもサッシカイア、ソライアと並ぶ“3大アイア”として頂点に立ち、「ボルゲリの奇跡」と称されるのが偉大なワイナリー、オルネッライアである。


オルネッライアは1981年、ロドヴィコ・アンティノーリにより創設された。当初はカリフォルニアでのワイン造りを考えていたが、伝説的醸造家アンドレ・チェリチェフとの出会いが転機となる。チェリチェフは「ボルゲリはポムロールやサンテミリオンの土壌にカリフォルニアの気候を併せ持つ理想的な地」と助言し、ロドヴィコは故郷でのワイナリー設立を決意した。創設期にはチェリチェフ、1991年からはミシェル・ロラン、2005年からはボルドー出身のアクセル・ハインツが醸造を指揮。アンティノーリやサッシカイアとは異なる国際的醸造陣により、イタリアワインの新たな歴史を切り開いた。
ワイン造りにおいてチェリチェフがまず説いたのは「品種と土地の最適な組み合わせ」であった。ボルゲリの土壌は石灰岩、片岩、泥灰土、粘土、泥土、砂、小石、砂利などが複雑に入り混じるが、オルネッライアでは1982年の植樹以降、海抜50〜120mに広がる115haの畑を土壌とミクロクリマによって70区画に細分化し、最適な品種を栽培している。海沿いという立地の恩恵でブドウは豊富な日光に加え海からの反射光を浴び、涼しい海風が成熟をゆるやかに進める。夜間には丘から冷涼な風が吹き、高熟度とフレッシュな酸が共存する。こうしたテロワールの優位性が品質を支える。畑はすべてサステイナブル農法で管理され、一部ではオーガニック栽培も実施。全区画手摘みのため約80名が常時従事する。収穫後は除梗前後の二度の選果に加え、2016年には光学式選果台も導入。選び抜かれたブドウは区画ごとに醸造され、発酵は主にステンレスタンクで行う。熟成には大樽、バリック、ステンレス、コンクリートなどを使い分け、最終的に「エレガンスとヴィンテージの個性」が基準となりブレンドされる。2006年に始まった「ヴェンデミア・ダル・ティスタ(芸術の収穫)」は、毎年著名アーティストが収穫年の本質をラベルに表現するプロジェクトである。


オルネッライアのワインは、恵まれたテロワールと最先端技術、妥協なきこだわりによって生み出され、濃厚かつパワフルでありながら、驚くほど滑らかで柔らかい。オーク由来の甘い果実味が溢れる甘美なスタイルでありながら、並外れた気品と完成度を備え、一流ワインに求められる品格を見事に体現する。2001年にはワイン・スペクテイター誌のTop 100 Winesで世界1位を獲得し、ワイン・アドヴォケイト誌でもボルドー5大シャトーに匹敵する高評価を常に獲得している。今後も革新を続け、イタリアの頂点に立つワイナリーとして君臨し続けることは間違いない。

商品コード:10507E
ソーヴィニヨン・ブランを主体に、複数の白ブドウをブレンド。熟したストーンフルーツ、青リンゴ、メロン、柑橘果実に白い花や僅かにバニラのヒント。フレッシュな果実と豊かなコクのバランスが心地よく、余韻には生き生きとしたミネラルが感じられる

商品コード:03979E
オルネライアをカジュアルに楽しめるエントリーワイン。熟したラズベリーやブルーベリーのアロマを、フローラルやスパイス、アーモンドのノートが縁どる。おおらかな果実と爽やかな酸が心地よく広がり、クリスピーで生き生きとしたフィニッシュへと続いていく。