高価なブルネッロが多いなか、そのコストパフォーマンスはクオリティと同様見逃せないポイント。
高価なブルネッロが多いなか、そのコストパフォーマンスはクオリティと同様見逃せないポイント。
トスカーナのみならず、イタリアを代表する赤ワインでもあるブルネッロは、ティレニア海から約60km離れたモンタルチーノの町を中心とした丘陵地帯で造られる。生産エリアはモンタルチーノの丘の北側斜面、南西側斜面、南東側斜面、そして丘を下った最南端と、大きく4つに分類され、それぞれ異なるキャラクターのブルネッロが生まれる。その中で、バンフィやカステル・ジョコンドといったモダン派の大御所から、クラシック派の重鎮ソルデーラまで、ワインのスタイルに関わらず数々の著名生産者を擁するのがモンタルチーノの丘の南西側斜面のエリアだ。主に南に開けたなだらかな斜面に畑が広がり、土壌は粘土や砂が混ざったガレストロ主体。日照量が豊かなエリアだが、同時にティレニア海との間には高い山や丘がないため風通しがよく、極度の乾燥と熱から守られる。また、海抜が高い畑が多く、爽やかな風が吹くことから、力強さとエレガンスを兼ね備えたワインが生まれるとされる。
このモンタルチーノの南西地区にて、2001年にイル・ヴァレンティアーノを設立したファビアーノ・チャッチは、モンタルチーノで代々農業を営む家系に生まれた生粋の栽培家だ。彼の祖父ディーノは1967年に創設されたブルネッロ協会の設立者のひとりであり、同じく南西地区の老舗モカリの創始者でもある。ファビアーノはモカリで祖父と父とにワイン造りを学んだが、兄がモカリを継ぐことになったため、自身のワイン造りを追求すべく、所有地を分割相続して新たに醸造所を立ち上げることを決めた。新たな門出への決意と意気込みは、自身の名と妻のヴァレンティーナの名を掛け合わせた醸造所名にも表れている。彼が相続した7haの畑は海抜350-400mの南向き斜面にあり、土壌は質の高いブルネッロを生み出すガレストロである。日照量は申し分なく、海抜が高い畑に特有の爽やかな風も吹くため、このエリアに典型的なキャラクターである力強さとエレガンスがワインにもたらされる。畑は全てブルネッロに格付けされているため、最終的にバレルテイスティングによってブルネッロとして瓶詰めするのかロッソにするのかが決められる。自然を尊重した最高のワインを造ること、というファビアーノのフィロソフィは、ケルト神話に由来し、絡み合う根と枝が命の循環を表す生命の樹のロゴからも伺える。栽培には除草剤や殺虫剤など化学薬品は使わず、畑の下草は刈り取り、そのまま自然の肥料として用いている他、カビ病に対しては硫黄や銅などの自然由来の調剤で予防的な対応を行っている。また、害虫にはそれに敵対する昆虫を畑に住まわせていることで対処している。長年チャッチ家が培ってきた農家的なアプローチと、生物学者である妻のヴァレンティーナのアカデミックなアプローチを統合した独自の手法に加え、モンタルチーノの多くの醸造所でワイン造りに携わるパオロ・ヴァガッジーニがコンサルタントを務める。細やかな畑仕事から得られたブドウからピュアなワインを生み出すために、抽出は控えめに行い、0.8気圧という低い圧力でブドウを圧搾。熟成にはスラヴォニアオークやフレンチオークの大樽を用いている。
イル・ヴァレンティアーノのワインはクラシカルなスタイルを軸にしつつ、程良くモダンなタッチも感じられ、リリース直後からでも楽しめる柔らかく充実した味わいが魅力だ。まだ若い生産者だが、デカンター誌の2009ヴィンテージのブルネッロのパネルテイスティングでは、サルヴィオーニやチャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナに続き、最高評価ワインのひとつにも選ばれた。高価なワインが多いブルネッロにおいて、そのコストパフォーマンスの高さもクオリティと同様見逃せないポイントだ。
商品コード:12141E
商品コード:10062E
瑞々しい赤いベリーのアロマティックな香り。柔らかな果実とエレガントなストラクチャーが織りなす味わいはクリーンで程良くモダン。伸びやかな酸がジューシーなフィニッシュへと導く。
商品コード:09625E
ラズベリーやチェリーなど赤系果実のエレガントなアロマに、ほのかなバニラやスパイスのニュアンス。しなやかで流れるような味わいにはモンタルチーノの南西地区の魅力が素直に表現されており、日照豊かな南向き斜面が育む充実した果実感と、高い標高の畑の涼やかな気候がもたらす緊張感を備えている。