行政区画上の県としてのコート・ドールの最南端の村となるサントネは、生産されるワインの85%が赤という、赤主体のアペラシオンである。かつての評価は今よりもはるかに高く、19世紀前半には現在の約1.5倍となる500ha近い畑からワインが造られ、ヨーロッパ各地で楽しまれていた。今日では、その栄光は忘れられがちだが、シャサーニュ・モンラッシェの丘陵から地続きの地勢や、コート・ド・ニュイに似た地層を持つサントネが、ブルゴーニュが誇るピノ・ノワールの銘醸地であることは疑いようがない。マット・クレイマーは著書の中で、サントネはおいしい赤の産地であり、その価値は食事との相性での中ではかられるべきだと述べている。
1995年に設立されたフィリップ・ジャノは、所在地こそ近隣のサン・セルナン・デュ・プランとなるが、サントネを中心にワインを手掛けるドメーヌである。設立者のヴァレリーとフィリップ・ジャノ夫妻は、彼らの叔父の一人が運営する醸造所で醸造家として働きつつ、ワイン造りのノウハウを学び、少しずつ畑を買い足し、独立を果たした。現在では、所有畑は10haまで広がり、2人の息子のカンタンもワイン造りに参加している。栽培では土壌の自然なバランスを尊重し、リュット・レゾネを採用。殺虫剤などの薬剤の使用は最小限に抑え、畑の余分な雑草は除草剤ではなく草刈り機で除去する。また、収量制限のために、全ての区画でグリーン・ハーヴェストや除葉を実施している。健全でクオリティの高いブドウを得るためには、1年365日、畑仕事は欠かせないという。醸造面では抽出はあくまでソフトに行い、単純な濃さではなく、素直な果実の風味を追及している。畑とセラーで計2回選果した後、完全除硬したブドウをステンレスタンクで約1週間低温浸漬させ、自然酵母で10-14日間アルコール発酵。低い圧力でプレスした後、バリックで10-12ヶ月間熟成させる。
温泉地としても知られるサントネは、きらびやかな発展を遂げる前のコート・ドールの風景を思い起こさせる村ともいわれる。フィリップ・ジャノのワインはまさしく、古き良きブルゴーニュの面影を今なお残すサントネそのものの味がする。どこか素朴な雰囲気が漂う、素直なおいしさを備えた香り高いピノ・ノワールだ。彼らのサントネは、「望み通りのピノらしいサントネ」というコメントともに、初掲載のギド・アシェット2015年度版で1ツ星を獲得している。
商品コード:10195E
ワイナリーのあるサン・セルナン・デュ・プラン、サントネとマランジュの三区画のブレンド。樹齢は平均20年。フレッシュな柑橘果実、白い花のフローラルなアロマ。口の中では果実味、酸、ミネラルが見事にバランスを取り合っている。フルーティーでエレガントなシャルドネの魅力にあふれた一本。
商品コード:09722E
畑はドメーヌの本拠地、サン・セルナン・デュ・プランの南東向き斜面にある。樹齢約40年。瑞々しいイチゴやチェリーのアロマ。ピノ・ノワールの香り高さが素直なタッチで描かれた味わいには、甘酸っぱい赤系果実が染みわたる。
商品コード:11428E
海抜310mにある南東向きの0.4haの区画のブドウから造られる。樹齢は85年を超え非常に高い。華やかな赤果実のアロマ。口に含むと美しい酸と、ジューシーで旨味をともなったフレーバーは焦点が定まっている。
商品コード:10196E
平均80年という高樹齢のブドウを使用。ブラックカラントや赤系ベリーに僅かなスパイスが香るアロマ。フレッシュな酸としなやかなタンニンが果実を見事に支えている。一般的な硬くてごわごわしたタンニンのあるスタイルとは一線を画す、若くても楽しめる果実味とフィネスを重視したマランジュ。
商品コード:09723E
海抜約400mにある単一区画のブドウから造られる。樹齢は50年以上。熟した赤系果実の豊かな香り。押しが強く荒削りなワインが多いとされるサントネだが、しなやかな果実、クリアな酸、細かなタンニンを備えた味わいは非常に女性的。余韻にかけてじわりと広がる旨みが心地よい。
商品コード:09724E
サントネの中でも、深みと複雑味を備えたワインを生むといわれるシャサーニュ側のエリアに位置するプルミエクリュ。土壌は石灰が非常に強く、シャサーニュのように多量の石を含む。樹齢は約40年。赤系ベリーやブラックチェリーのアロマに甘いスパイスのニュアンス。味わいは凝縮度と密度を増し、旨みを伴う甘酸っぱい果実が長い余韻まで続く。