ワインに複雑味やミネラルを与えるため、澱と共に長く熟成させるスタイルは、独特のスモーキーさや重厚感を生み出す。
ワインに複雑味やミネラルを与えるため、澱と共に長く熟成させるスタイルは、独特のスモーキーさや重厚感を生み出す。
コルマールから北へ約35km、フランスで最も美しい村と称えられるミッテルベルクハイムが誇るゾッツェンベルクは、アルザスで唯一シルヴァネールが認められたグランクリュである。この村とバールを隔てるようにヴォージュ山麓からせり出した丘の南側斜面に位置しており、近隣のグランクリュに比べると勾配が緩やかで、アルザス平原に向かって開けたアンドローの谷の扇状地に面しているため全体的に非常に日当たりが良い。重く保水性のよい泥灰石灰質の土壌と温暖な気候は、シルヴァネールやゲヴュルツトラミネールのような、豊かなボディのある柔らかな味わいの品種の特徴をさらに生かす働きをする。
1946年に元詰めを開始したリーフェルは、ミッテルベルクハイムを中心に両隣のバールとアンドローに計9.5haの畑を所有している。現在、栽培・醸造を担うルカ・リーフェルは、アルザス、ブルゴーニュ、ドイツで修業を積み、特に同郷の奇才アンドレ・オステルターグから多くを学んだ。1996年に父親からドメーヌを任されたルカは徐々に有機農法を採用し、2009年よりビオディナミに完全転換。自然酵母での発酵では伝統的なフードルとステンレスタンクを使い分け、熟成においてはワインに複雑味やミネラル感を与えるため、澱とともに長く熟成させることを大切にしている。またこれにより、彼のワインに特徴的なスモーキーさが生まれるという。品種特有のフローラルで優しい果実を重要視するゲヴュルツトラミネール以外は、全て辛口となるようワイン造りを行っているが、比較的穏やかで湿潤な気候を持ち、中部や南部アルザスほどブドウの糖度が上がらない北のエリアにおいては当然の表現方法であるかもしれない。マルク・クライデンヴァイスのアントワン・クライデンヴァイスやジャン・ダニエル・ヘリング等、近隣の同世代の生産者との親交も深く、今後の活躍が楽しみな若い造り手である。
ミッテルベルクハイムにある沖積土の畑で栽培される樹齢20-50年のブドウを使用。良く熟した柑橘類や白桃の柔らかな香りにミントやセージなどのフレッシュハーブの爽やかさ。シンプルでクリーンな味わいの中に感じられるしっかりとしたボリューム感がハーブの爽やかなニュアンスとともにフィニッシュまで続く。
ミッテルベルクハイムとアンドローの間に位置する花崗岩と砂岩土壌の区画のブドウを使用。柔らかなフルーティさに満ちた味わいに、独特のミネラル感とスモーキーさがアクセントを添えている。樹齢35-50年。
舌の上にその存在を主張するずっしりとした果実と古樹(樹齢40-50年)ならではのエネルギーが感じられる複雑な味わい。シルヴァネールを適切な土地でまじめに造るとこれほど重厚なワインとなるという好例。ボリューム感と果実の熟度にゾッツェンベルクの重い土壌と日照に恵まれた気候が良く感じられる。
重い粘土の土壌で育つゲヴュルツトラミネールの魅力であるふっくらとした優しい果実とフローラルさを引き出すため、ブドウが過熟するまで収穫を待つ。華やかでグラマラスな果実と石灰を含む土壌由来の伸びやかな酸とバランスが良く、野暮ったさや過度の重苦しさが全く感じられない味わいに、テロワールの力と造り手のセンスの良さが光る。