アルジャーノは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ最南端のサンタンジェロ・イン・コッレを象徴する生産者だ。ワイン造りは1581年、シエナの貴族ペッチ家がヴィラを建造した頃に始まり、詩人ジョズエ・カルドゥッチもその品質を称えた。世界的な注目を集めたのは、1992年にオーナーとなったノエミ・マローネ・チンザノ伯爵夫人の時代で、潤沢な資金を背景に畑の拡大やセラー改修が進み、ワインの飛躍的な向上につながった。1995年にはジャコモ・タキスが手がけた革新的ワイン「ソレンゴ」が誕生。2003年からはボルドー出身のハンス・ヴィンディング・ディエルスが後任を務め、国際品種が注目されがちだが、アルジャーノの核はあくまでサンジョヴェーゼである。実際に、同社は1967年のブルネッロ協会設立に貢献し、1970年からブルネッロを手がけている。

本拠地であるサンタンジェロ・イン・コッレはブルネッロの産地で最も暑く、成熟が早いため周辺の生産者より2〜3週間早く収穫されることもある。温暖な気候と砂を含む粘土・石灰質土壌によって、ワインは豊満で大らかな味わいになる。この地の魅力を映すアルジャーノのブルネッロは専門家から高評価で、2010年VTはジェームズ・サックリングから98点を獲得し、2015年のトップ・イタリアワインの一つに選出。また、マスター・オブ・ワインのニコラス・ベルフレージは著書で、サンジョヴェーゼの個性を正確に表現したその品質に強い感銘を受けたと記している。

フランス品種を用いるソレンゴやノン・コンフンディトゥールはフレンチオークのバリックで熟成される一方、ブルネッロは大樽(ボッティ)で熟成される。52haの畑は土壌や品種で区分され区画ごとに醸造されているが、2013年にブラジルの投資家がオーナーとなって以降、畑の潜在力を引き出すための大規模投資が進んでいる。2015年には、世界的エノロゴでDecanter誌が「世界の5大醸造家」に選んだアルベルト・アントニーニがコンサルタントに就任。化学肥料の使用を抑え、害虫に対抗する益虫の導入やビオディナミ調剤の試験導入など、畑本位のアプローチを徹底している。さらにDRCやガヤなどへ苗木を供給するギョーム社と協働し、菌根研究にも取り組む。熟成用の大樽も新調され、25万本を熟成できる地下セラーも増設された。こうした改革により品質向上が進み、アントニオ・ガローニも将来性に強い期待を寄せる。実際、2018年のBrunello di MontalcinoはWine Spectator誌「2023年 世界トップ100ワイン」で1位を獲得し、アルジャーノの今後の躍進から目が離せない。