ボワ・ド・ブルサンは、1955年にイタリアのピエモンテから移住した現当主の祖父にあたるジャン・ベルシノによって設立された、シャトーヌフ・デュ・パプの家族経営ワイナリーである。当初はわずか3haのブドウ栽培農家として始まり、造られたワインはネゴシアンへと販売されていた。しかし徐々に自社での瓶詰めへと移行し、現在ではシャトーヌフ・デュ・パプ全域に28区画もの畑を所有するまでに成長した。彼らの畑は、ローヌ川に近いチョークを含む土壌、北部の砂岩、南部の丸石に覆われた赤土など、多様なテロワールで構成されている。この多彩な土壌環境から多様な個性を備えたブドウが育まれ、それらをアッサンブラージュすることこそが、同ドメーヌが誇るワインの複雑味と奥行きの源泉となっている。


現在のドメーヌを牽引するジャン・ポール・ベルシノは、創設者である父ジャン・ベルシノからワイン造りを受け継いだ2代目の現当主である。彼は若い頃から父と共にワイン造りに携わり、1987年にドメーヌを正式に相続した。当主となった彼は、それまで生産量の半分をネゴシアンに販売していた体制を見直し、プライベートな顧客に向けた自社瓶詰めの比率を高め、独自の市場を開拓するという重要な歩みを進めた。そのようにワイナリーを拡大していく中でも彼は産地全体で急速に進む現代化の波に飲み込まれることなく、伝統を固く守り抜く道を選んだ。「父親から引き継いだ伝統を変える必要はない」と断言する彼は、全てを除梗し新樽を効かせる現代的なスタイルに迎合せず、古典的な姿を今に伝えている。
ジャン・ポールが徹底しているのは、土地の生命力を引き出す栽培手法だ。有機認証を取得したのは1999年だが、創業当初からオーガニックな栽培方法を実践していた。可能な限り森林を畑に隣接させることで生物多様性を維持し、ブドウ樹の活力を自然に高めている。植えられているブドウの多くは樹齢40年から80年の古樹であり、中には樹齢100年を超えるグルナッシュも存在する。醸造においても、1980年代から変わらない伝統的手法が貫かれている。収穫された複数品種のブドウは、野生酵母のみでセメントタンクにて高い全房比率(ヴィンテージよる)で発酵される。これにより、ワインにフレッシュ感とストラクチャーが与えられる。熟成には大樽を用いることで、古樹ならではの凝縮された繊細な風味を引き立たせている。


ボワ・ド・ブルサンのワインは、濃厚でフルーツドリブンなスタイルとは一線を画し、伝統国らしい伸びやかな酸味と荘厳なタンニンを備えた気品に満ちた仕上がりを誇る。醸造過程では何も足さず、フィルターもかけないという徹底した自然への寄り添いが、このエリアの多様なテロワールの個性をありのままに映し出している。ジャン・ポールの揺るぎない信念と伝統への深い敬意は、産地のあり方が変わる中にあっても、シャトーヌフ・デュ・パプ本来のクラシカルな魅力を守り続ける確かな力となっている。伝統的スタイルの王道を貫く彼らのワインは、これからも真のテロワールの表現を求める愛好家を魅了し、その価値を未来へと伝え継いでいくであろう。