ヴァレ・ド・ラ・マルヌ右岸、キュイル村に居を構えるムッセは、17世紀から続く歴史あるブドウ栽培農家である。1923年、現当主の曾祖父ウジェーヌ・ムッセが、この地区で最初の1人としてシャンパーニュ造りを開始したことからワイナリーとしての歴史が始まった。ウジェーヌは事業の基盤を築くとともに、村の発展に大きく貢献し、村の中心的人物として尊敬を集めた。その功績はキュイル村の「ウジェーヌ・ムッセ通り」と名付けられた通りに今も刻まれている。2013年からは現当主セドリック・ムッセが指揮を執り、曾祖父、そしてキュイル村の村長を25年務めた父の思いを受け継ぎながら、ワイナリーを更なる高みに導いている。
ムッセが所有する17haの畑は、キュイル村を中心に3つの村にまたがり、南向きの斜面に広がっている。この地域には、シャンパーニュの他の地域ではあまり見られない「イライト (Illit)」と呼ばれる緑色の粘土層が広がる。セドリックはこの粘土こそがムッセのテロワールのDNAであるとし、暑く乾燥した夏でも土壌の湿度を保つ性質があること、また酸化鉄やマグネシウムを豊富に含むことが、ムニエに柑橘類、白い果実、白桃のアロマを与え、味わいにほのかな苦みと長い余韻をもたらすと語る。2020年以降は、農法をリュット・レゾネからビオディナミに移行し、除草剤不使用、エコ・パスチャー(鶏、羊、豚の活用)、カバークロップやプレパラシオン、エッセンシャルオイルの導入など、より豊かな環境の維持に取り組んでいる。これらの畑から「ピュアでナチュラル、そして緊張感のあるムニエ」を造り出すことがセドリックのポリシーだ。
セドリックが目指すワインスタイルは「最小限の介入と明確な目的を持つ醸造アプローチ」によって実現される。2017年以降、ドサージュ量を下げ、新樽不使用、ステンレスタンクへの切り替え、酸化リスクの除去など様々な改革を図り、さらにジャック・セロスやベレッシュでも導入されている最新の傾斜式コカールプレス(PAI)も2台導入した。酸化防止のため、収穫時には使用するケースを従来の45kgから17kgの小型サイズに切り替え、プレス後の果汁を保管するタンク内を発酵時に発生したCO2で満たすなど、徹底した管理を行っている。また、”テロワールをマスクしないニュートラルな醸造”の理念から、ステンレスタンクでの一次発酵・熟成中は、頻繁に澱引きを行い、澱由来の風味がワインに影響を与えないよう注意を払っている。ムッセの独自性は使用するSO2にも表れている。一般的に使用されている石油由来のSO2は環境やテロワールの表現に悪影響を与えるとして、ムッセではポーランドの鉱山から採掘・精製された硫黄を燃焼させることで自家製のSO2を生成している。このプロセスで得られる液体SO2溶液は業界標準より30%効率的であり、酸化リスクを出来る限り排除した醸造フローと合わさって、SO2使用量を最小限に留めることが可能になったとセドリックは胸を張って語る。事実、瓶詰め後の総亜硫酸量は各キュヴェ10〜15mg/L程度と非常に低く、バックラベルにはその情報が誇らしげに記され、彼らのシャンパーニュが他に類を見ない純粋さを備えていることを飲み手に訴えかけている。
セドリックはこれらの改革に50万ユーロを投資すると同時に、ゼロ・カーボンの目標も掲げ、軽量ボトルやリサイクル可能な紙キャプセル、ソーラーパネルの導入、湧き水の使用、剪定枝を暖房に活用するなど、環境保護と品質向上の両立に高い意識で取り組んでいる。ムニエを中心に構成される彼のポートフォリオは、以前に比べ、よりフレッシュで引き締まったものへと進化しており、SO2添加量が低いにも関わらず、熟成ポテンシャルも大幅に向上している。その品質は著名評価誌でも高く評価されており、Decanter誌は「セドリック・ムッセはマルヌ・ヴァレーで最も洗練されたチャーミングなムニエを造っている」、Vinous誌は「ムッセのシャンパーニュは、ダイナミックなエネルギーと繊細さによって特徴づけられている。注目すべきドメーヌであり、今後も大きなポテンシャルを秘めている」と称賛を送っている。
商品コード:12284E
キュイル、ジョンクリー、シャティヨンの3つの村のブドウをブレンド。タイユの比率が高いため親しみやすく飲みやすい仕上がり。有核系果実や青りんごのフルーティーでフレッシュなアロマとチャーミングな果実味が楽しめる軽快なワイン。
商品コード:12282E
創始者Eugene Mousseよって造られた特別なキュヴェは、現在では一族の歴史を象徴する1本となっている。キュイル、ジョンクリー、シャティヨンの3つの村のブドウをブレンドし、2003年からのパーペチュアル・リザーブを使用。リンゴやアプリコットを思わせるアロマとリザーブ由来の熟成感が楽しめる。高い酸がバランスを取り、ドライな味わいの中にも果実の甘さが感じられる、柔らかな印象のワイン。
商品コード:12286E
キュイル村のブドウのみを使用し、2014年からのパーペチュアル・リザーブで造られるムニエ100%のキュヴェ。ノン・ドサージュでありながら、リンゴや洋梨主体の柔らかな果実味が印象的。穏やかな酸と細やかな泡、優しい果実が一体となった長く、心地よいフィニッシュ。
商品コード:12285E
キュヴェ名は「Illite(イリット)」と呼ばれるこの地特有の緑色粘土に由来し、ワイナリーの所有畑の中でも特にこの粘土層が厚い区画を選んで造られている。プラムやリンゴ、オレンジピールのアロマが広がり、おおらかな果実味を張りのある酸が支えている。余韻には塩味のアクセントが感じられる。
商品コード:12287E
キュイル村のフォルト・テールという区画に植わるムニエを使用。熟したリンゴや洋梨の豊かな果実味に、フィニッシュまで一貫して感じられるチョークのヒントがワインに力強さと緊張感を与えている。果実の凝縮感が格段に高く、ムニエの表現力が際立つエネルギッシュなワイン。
商品コード:12283E
ベースとなるウジェーヌに、キュイル村からの赤ワインをブレンドして造ったロゼ。赤ワインはキュイル村の単一区画に植わるムニエを樽発酵・熟成させている。フランボワーズやイチゴといったチャーミングな赤系果実のアロマがたっぷりと感じられ、ふんわりと柔らかな果実味の余韻が長く続く。