サンジュリアンの格付け二級であるレオヴィル・ラス・カーズは、メドック最古のワイナリーの一つに数えられ、そのルーツは17世紀まで遡ることができる。もとはレオヴィル家という貴族の領地の一部であったが、18世紀のフランス革命の余波を受けて3つに分割され、ラス・カーズは以前の敷地の3/5を踏襲する形で誕生した。シャトー・ラトゥールに隣接するこの敷地は、現在のグラン・ヴァンを生み出す最重要区画「グラン・アンクロ」となっており、この畑を囲む石垣と門の上に佇むライオン像はサンジュリアンからポイヤックへと抜ける道中のランドマークになっている。55haのグラン・アンクロは、ゆるやかに起伏する2つの小さい丘から形成され、河岸に向かって急激に落ち込んでいる。ジロンド川との距離は約1kmほどだが、すぐ目の前を流れているように見える。丘のふもとは厚く堆積した砂利層で、砂と粘土の割合が畑を通して不均一となっており非常に複雑な土壌を構成している。南-南東向きの斜面はジロンド川を望む絶好のロケーションにあり、川の暖気が霜害のリスクを軽減させるだけでなく、反射熱の作用から毎年完熟したブドウが安定して収穫できる。醸造は伝統的な方法で行われ、フレッシュな果実味と美しい酸を保つこと、またオークの香りが決して支配的にならないよう細心の注意が払われる。こうしてサンジュリアンで最も力強く、骨格のしっかりとした長期熟成のポテンシャルの高いワインが生まれる。
セカンドワインが商業的に流行を極めたのは1980年代以降のことだが、ラス・カーズのセカンド的な位置づけであったクロ・デュ・マルキ(以後CdM)が造られたのは早くも1902年。注目すべきはそれだけでなく、当初からグラン・アンクロとは異なる畑(さらに内陸に500m入ったエリア)のブドウを使っていたことである。通常であれば、よりよいファーストワインを造るために、シャトーたちは若木や水はけの悪い区画といった品質選定から漏れたブドウをセカンドに使用するが、CdMでは当初からファーストとは全く別の個性を持つ異なるテロワールのブドウを使用していた。これは言うなれば、ファーストになりうるブドウを使っていたと換言でき、CdMが他シャトーのセカンドの追随を許さない常に卓越した品質を誇っていたことを実証している。しかし、それでも飲み手の中ではCdM=ラス・カーズのセカンドという認識が根強く残っていたため、シャトーは正式なセカンドとして2007VTよりプティ・リオンをリリース。また、CdMはラス・カーズとは全く別のコンセプトという認識をより広めるため、CdMのセカンドであるプティット・マルキーズを2015VTよりリリースした。
現オーナーであるジャン・ユベール・ドロンは19世紀後半からラス・カーズを所有するが、同家は他にメドックのシャトー・ポタンサック、ポムロールのシャトー・ネナンを所有する。わかりやすいパワフルさが好みであった先代の父のスタイルから飛躍したジャン・ユベールのスタイルは、上品さとバランスを兼ね備えた緻密なラス・カーズであり、スーパーセカンドの筆頭株としてふさわしいグラン・ヴァンの緊張感と優雅さを獲得している。
商品コード:03944E
ジューシーな赤系果実に花やミント、スパイスが混ざる魅力的なアロマ。口の中では、プラムやブラックベリー、スミレやバラの花びらを感じ、豊かなリコリスとローストしたオークのニュアンスがフィニッシュまで心地よく持続する。セカンドとは思えない程のバランスと品質を持っている。
商品コード:03930E
非常にリッチでボリューミーな口当たり、完熟したブラックチェリーやカシスが折り重なり、その中に石のミネラルと上質なオークに由来するトーストのニュアンスが溶け込むミディアム-フルボディのフレーバー。豊富なタンニンとそれを支える果実味、酸の素晴らしいバランスと長い余韻が楽しめる。